閉幕のご挨拶
2024年9月15日(日)、「福島ビエンナーレ2024 風月の芸術祭in白河」を閉幕しました。
多大なるご尽力を賜りましたアーティストの皆さま、協賛団体、関係各位、そして白河の会場にご来場頂いた皆様方に厚く御礼申し上げます。
福島県で2004年からビエンナーレ(隔年)で開催されてきた現代アートの祭典は、2020年から2024年まで、白河市の歴史、文化を基盤に展開してきました。「風月」というタイトルは江戸時代の白河藩主松平定信の雅号に由来します。
遡ること2020年、はじめて白河で開催した芸術祭は、新型コロナウィルスの感染拡大の状況下で、「祈/Prayer」をテーマに、AR(Augmented Reality・拡張現実)など、遠隔地から鑑賞できる企画を加えした。
2022年は、「境/Borderless」をテーマに、実際に会場で鑑賞できる展示を開催し、講演会、アニメーションの上映会、ワークショップの企画を多数実施しました。
2024年は「起/Rise」をテーマに開催しました。
「起」には、白河だるまの七転八起にちなむとともに、起立や起動などの上昇志向や、起源や縁起などの<相依性>(そうえしょう)などと関連させました。
<相依性>は、あらゆる事物はそれ単独で成り立ち、存在しているのではなく、他と「相」(あい)互いに「依」(よ)り合う、関係性で成り立つという意味があります。
立ち上がり、前進して活動することと、縁起として多様な世界と関わることの二つの意味を「起」は含み持っています。
また<相依性>から今年度は「見えないものを見る」というテーマも背後にありました。
森合音さんのホスピタルアートの講演会や、映画「目の見えない白鳥さんアートを見に行く」」の上映会と白鳥健二さんによる芸術祭の鑑賞会、女子美術大学の鴻崎正武教授によるワークショップ『キメラ神獣だるま☆をつくろう!』。
絵本作家の飯野和好さんや妖怪研究家の関本創さん、福島大学による妖組による白河の妖怪「双尾の狐」の紙芝居も創作されました。
木下史青さんの龍興寺に現れた巨大なドクロの茶室は圧巻で多くの方々を魅了しました。
不可視の存在を主題として描く金子富之さんのドローイング、翠楽園での小松美羽さんの狛犬・神獣をモチーフとした作品もまた、多くの反響がありました。また今回話題となったのは、漆を用いて植物の生命力や神秘性を表現する吾子可苗さんと今年早逝された素晴らしい井波純さんの漆芸作品。
南湖公園の風景に溶け込んだ黒沼令さんによる木彫の人物像や谷津田川にかけられた布によるワークショップ作品は、穏やかな風と見えない空気が現れていました。
南湖公園で企画されていたフェスティバルには、台風のため中止となってしまいましたが、林剛人丸さんの夜空に浮かび上がる気球の作品や北村はるかさんによる狛犬のグッズは、新たな場で再展示しました。
「Rise」にはまた、高める、育てるという意味も込められています。南湖公園の風景に溶け込むように展示されたコマライザー(ヤノベケンジさんとダルライザーによる作品)は、ダルライザーが変身する装具として新たに完成し、白河の関で撮影された新作の映像作品をH Pで公開しました。
さらに、今年の芸術祭に向けて、アーティスト レジデンスで参加されたAyaさんと白河の中学生の版画作品、昨年公募した「白河アートだるま」の企画には、全国からおよそ330体以上のクオリティの高い作品を応募していただきました。
また今回、アートだるまのハンコも公募し、スタンプラリーを行いました。
このように多くのアーティスト、地域の皆さま、そして訪れてくださった観客の皆さまによるご協力と情熱により、今年の芸術祭も成功裏に終えることができました。
今年もアートを通じて、白河の自然、文化、そして歴史に触れ、新たな発見と対話を生み出すことができたことを大変嬉しく思います。
南湖公園をはじめとした白河市内の史跡、文化施設、図書館、街中の展示、白河市内の小学校、中学校、高等学校とも連携し、地域の未来を担う子どたちと関われたことも、この上ない喜びでした。
「風月」という名の通り、芸術祭は風のような見えない力で地域に流れ、新しい未来への扉を開く場となったことと思います。
アーティストたちの創造性、地域の皆さまのご支援、そして来場者の皆さまとの対話は、白河市、ひいては福島の未来をより明るくする一助となったことでしょう。
閉会にあたり、参加者の皆さま一人ひとりがさらにまた<相依性>として、ますますご発展されることをお祈ります。
また福島の地で、アートを通じて再会できる日を楽しみにしております。
最後にあらためて皆様に御礼を申し上げます。
福島ビエンナーレ2024 「白河・風月の芸術祭」藝術監督
渡邊晃一